症状
大腸ポリープはほとんど自覚症状がないことで知られています。症状が現れるケースとしては、血が混ざった便や、粘液が付いた便が出てくることがあります。また、ポリープが大きくなり、大腸がんになると大腸を塞いでしまい腸閉塞を起こしたりすることもあります。
また、大腸がんの中には家族性大腸腺腫症(大腸内に無数のポリープが発生する病気)などの遺伝性の疾患もあり、発症に遺伝が関係することも知られています。したがって、ご家族の中で大腸がんや大腸ポリープと診断された方がいらっしゃる場合は、検査を受けることが望ましいです。
大腸カメラは微小な大腸ポリープを発見可能な唯一の治療法
大腸カメラの正式名称は「下部消化管内視鏡検査」と言い、粘膜の色の変化や凹凸などを目視で確認できるため、ポリープの発見に非常に効果的です。当院では、特殊光や画像処理、拡大などによって、微小な病変であっても見逃すことなく早期発見を実現しております。また、ポリープを発見した際はその場で切除する日帰り手術を行いますので、患者さんの負担も小さいです。また、生検(組織の一部を切除する検査)を行うことで、確定診断につなげることも可能です。
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を守るための早期発見・早期治療
食生活が欧米化したことが原因で、日本における大腸がんによる死亡者数は、肺がんに次いで2番目に多いです。特に、女性のがんによる死亡者数においては、大腸がんが最も多いことで知られています。
大腸がんは進行が遅く、検査方法も複数ある(便潜血検査、大腸カメラなど)ため、他のがんと比べて早期発見しやすいと言われています。早期に発見できれば、内視鏡手術で切除することができますが、進行が進むと肺や肝臓へ転移することもあり命を落とすことにもなりかねません。40歳を超えると大腸がんの発症リスクが高まります。自覚症状がなくても定期的に大腸カメラ検査などを受診し早期発見・早期治療に繋げていくことをお勧めします。
大腸ポリープ切除のメリットと手法
大腸ポリープは大腸がんとなるリスクがありますが、ポリープの段階で内視鏡手術で切除することによって、がんを予防することが可能です。また、ポリープのサイズが大きくなるにつれて術後の出血など合併症のリスクが高まるため、なるべく小さいうちに切除しておくことをお勧めします。
当院では、大腸カメラ検査を行い、病変を発見したらその場で切除することが可能です。切除は日帰り手術として行われるため入院の必要もなく、そのままお帰りいただけます。しかし、ポリープのサイズや数、形状などによっては、日帰り手術では対応できないケースも稀にあります。その場合、提携している高次医療機関をご紹介し、適切な治療を受けていただけるようサポートさせていただきます。
ポリペクトミー
ポリープ切除の方法で最もポピュラーなやり方です。ポリープにスネアという金属性の輪をかけて、高周波電流を流して切り取ります。開腹せず痛みを伴うことも少ないですが、高周波電流の熱によって稀に出血や穿孔といった合併症を引き起こす恐れもあります。
コールドポリペクトミー
ポリペクトミーと同様にスネアをかけて切除する方法ですが、高周波電流を流さずに切除を行います。熱によるダメージが伝わることなく、出血や穿孔といった合併症リスクが低いため、当院ではこの手法を主に用いています。また、切除を行うまでの工程が少ないため、短期間でポリープの切除が可能となり、従来であれば切除が難しかった5mm以下の小さなポリープにも対応しています。
内視鏡的粘膜切除術
平坦なポリープに対して行われるやり方です。ポリープの下の粘膜下層に生理食塩水を注入し、ポリープを浮かび上がらせます。その後、浮かび上がったポリープの根元にスネアをかけ、高周波電流を流して切除していきます。生理食塩水の注入することで、熱のダメージが下層に伝わらないため、合併症のリスクも比較的少ない方法です。
切除後の注意点
大腸ポリープの切除は比較的患者さんの身体の負担が少ないものです。しかし、合併症のリスクを抑えるために、術後数日から1週間程度は、食事、アルコール、移動、運動、入浴などの制限について患者さんにご協力をお願いしております。
ご帰宅後の過ごし方
睡眠
当日は安静な状態を保って、十分な睡眠時間を確保するようにしてください。
入浴
当日は、シャワーのみでお願いいたします。入浴は翌日から可能ですが、長湯はしばらく控えてください。
食事
当日の食事では、油が多いものや刺激が強い香辛料の摂取を避けてください。
飲酒
アルコール摂取は1週間程度を目安にお控えください。
運動
腹部に圧力がかかる運動は1週間程度控えてください。なお、運動再開の時期は、個人差や運動の内容によっても変わりますので、医師にご相談ください。
旅行・出張
車や電車などでの長距離、長時間の移動は負担が大きいため、術後1週間は控えてください。特に、飛行機による移動は気圧の変化が大きく患者さんの身体の負担が大きいため、短時間でも避けてください。遠方に移動されますと、万が一何かあった際に適切な処置ができない可能性もありますので、ご理解をお願いいたします。
よくある質問
大腸ポリープはがんですか?
大腸ポリープは大腸がんではありません。しかしながら、ポリープには数種類存在し、中でも悪性の腫瘍性ポリープというものがあります。それがいわゆるがんです。すべての大腸ポリープのうち約2割ががんであると言われているため、ポリープ切除することはがんの早期発見に重要であるとされています。
大腸ポリープがあるとどんな症状が出ますか?
一般的に大腸ポリープが患者様が自覚するような症状を引き起こすことはありません。稀に、血便や腹部膨満感、便秘といった症状が現れることがあります。がんだった場合、早期発見が大切になるため、自覚症状の有無に関わらず定期的に大腸カメラ検査を受けるようにしましょう。
大腸ポリープががんになる確率は?
大腸ポリープはサイズが大きくなることに比例してがん化する確率も高くなるとされています。具体的には、5㎜以下のポリープのがん化率は0.46%、6~9mmは3.3%、10mm以上は28.2%程度であるとされています。可能な限り早期発見し、小さい段階で切除することで、がんでの死亡率をさげることに繋がります。
大腸ポリープができる原因は?
大腸ポリープができる原因は、年齢や生活習慣が影響していると考えられています。年齢は40歳ごろから年齢が高くなるにつれて大腸ポリープの発生率が上昇します。生活習慣においては、高カロリー食や加工肉、過度の飲酒、喫煙が原因になっているとされています。また、ご家族に大腸がんを発症した経歴のある方がいる場合は遺伝的要因でご自身もポリープ発生率が高まるとされています。